多くの斎場(火葬場)では、友引(ともびき)が休館日となっています。そのため、この日に告別式や、火葬を行うことはできません。ただし、葬儀社所有の小規模な式場などでは、友引でも臨機応変に対応し、会場が使用できることはあります。
では、なぜ友引に多くの斎場が休業するのでしょうか。友引とは、暦にもとづいて運勢の良し悪しを占う「六曜」(ろくよう/りくよう)という暦注の中のひとつです。六曜は、友引のほかに、先勝・先負・仏滅・大安・赤口からなります。
もし友引に葬儀を行ったら、まだ生きている人間が死の世界に引き込まれてしまうという迷信が伝統的にあり、多くの斎場が休業するのです。そのため、この迷信を遺族が気にしなかったとしても、斎場が休むため、おのずと葬儀が行われないということになります。
六曜は、歴史的に中国から入ってきた風習で、仏教とは関係ありません。日本の葬儀は、よく知られるように、たいていは仏教式で行われます。仏教式の葬儀に六曜の考え方が混じるのは不思議な気がします。しかしそれを言えば、「斎場」という言葉も、元々は神道のものです。そう考えると、様々な宗教・風習が混合したのが、現代葬儀と言えるかもしれません。
人はいつ死ぬか分かりません。そのため、斎場は土日も営業しています。特に平日に仕事を持っている現代人には、土日にお通夜・告別式が行われるのはありがたいことです。しかし斎場という施設も、メンテナンスや従業員の休息のため、休みが必要です。友引にかこつけて、休館しているというのが現代の実情でしょう。