「戒名」(かいみょう)とは、人が仏門に入った証拠として授かる名前です。葬式仏教の影響で慣習として死後に授かるようになっていますが、熱心な仏教徒であれば生前から戒名をもつ人も少なくありません。なお、浄土真宗では「法名」(ほうみょう)といいます。
高額化した葬儀費用の中で、戒名料(戒名を授かる際に寺に支払う料金)の存在は大きいものがあります。特に祭壇や通夜ぶるまいの費用とは異なり、僧侶が故人に戒名を授けるのに物理的なコストはかかりません。そのことを考えれば、寺にとっては大変ありがたいビジネスです。
しかし建前上、戒名料というものは存在しないのです。なぜならば、葬儀の際に僧侶や寺に支払う料金は「お布施」というかたちをとり、あくまで遺族の自発的な寄進とされるからです。そのため、表向きは戒名料を明示することはありません。しかし現実には明瞭な相場があり、戒名のランクの高低による料金体系が存在することは否定できません。
そもそも戒名の存在自体、仏典には明記されていません。釈迦の教えには含まれていませんし、日本独自の風習であり、あらゆる仏教書の中に戒名という言葉は一切登場しないのです。にもかかわらずこのような風習が定着しているのは、寺の収入基盤になっているという背景があるでしょう。