日本に密教が入ってくると、現実の世界以外にさまざまな世界が存在すると説く密教の考え方が広まりました。これによって、つぎに浄土教が入ってきたとき、浄土教が説く死後の世界「浄土」を日本人を自然と受け入れました。
浄土は人間が死後に生まれ変わるとされる世界です。念仏を唱えれば極楽浄土に行くことができるが、罪を犯した者は地獄へおちることになると説かれました。特に平安時代の中頃、天台宗の僧侶・源信(げんしん)によってこの考え方が世に広まりました。
平安時代の貴族たちは極楽浄土への往生(=生まれ変わり)を強く希求し、浄土式庭園や阿弥陀堂がつくられました。その代表例が平等院鳳凰堂や平泉中尊寺の金色堂などです。仏教をひらいた釈迦は質素を重んじる人物でしたが、日本の貴族は華やかな浄土を夢見たため、それが日本においては葬儀が華美なものになる端緒となりました。