仏教が説く死後の世界、すなわちは浄土は、華やかな世界でした。浄土思想の影響を最初に強く受けたのが平安貴族だったこともあり、華やかな浄土に赴くために貴族たちは豪華な葬儀を行いました。仏教式の葬儀が華やかなものになる原点といえるでしょう。
人々がみな仏教徒となった江戸時代を経て近代になり、戦後、日本は豊かになりました。一億総中流という言葉があったように、日本人は生活のすべてにおいて人並みになることを競い合いました。かつては一部の裕福な家庭に限られたグランドピアノをこぞって買い求めたように、葬儀もかつては貴族に限られたような豪華なものを庶民が行うようになったのです。
日本の葬儀には戒名という独特な仕組みがあり、これも高額化の一因です。戒名を授かるには寺にお布施をします。戒名にはランクがあり、高いランクのものは百万円を越えます。かつては一部の檀家に限られた高位の戒名を庶民も手に入れるようになりました。
寺院は歴史的に国家や貴族、武士らのバックアップを受けて経営を成り立たせてきましたが、近代になり、政教分離の風潮もあり、これらの後ろ盾を失いました。寺は経営を支えるために檀家を頼らざるを得なくなりました。戒名の風習が根強いのは、寺が収入の柱として重視していることもあるでしょう。