南房総市には2012年10月にオープンした安房聖苑があり、南房総市民が死亡して火葬が行われる場合、この安房聖苑がもっぱら使用されます。安房聖苑は広域連合の安房郡市広域市町村圏事務組合による管理・運営で、同組合は南房総市のほか、館山市、鴨川市、鋸南町が加盟しており、安房聖苑のほかに長狭地区火葬場(鴨川市)も管理しています。そのため安房聖苑は公営施設であり、火葬場スタッフへ寸志やお清め(チップに類する金銭・物品)を渡してはいけません。
南房総市は房総半島の南方に位置し、房総半島最南端の野島崎を有します。南房総のエリアには独特の葬儀風習が残っており、火葬を最初に行ってしまい、御通夜・告別式・葬儀式は火葬後に行うのです。これは、いわゆる前火葬と呼ばれる風習です。昨今、市街地では徐々に家族葬、直葬も増えています。南房総市に本店・支店のある葬儀社は、JA安房、サンワコーポレーション、君商本店などの企業があります。
南房総市には和田漁港という漁港があり、こちらではツチクジラの捕鯨が行われています。南房総市と館山市は、伝統工芸品である房州うちわの産地です。京うちわ(京都市)、丸亀うちわ(丸亀市など)とならび、日本三大うちわのひとつと称されています。
房総半島最南端の野島崎は、太平洋から東京湾に入る入口付近であり、航路にとって重要な位置にあります。かつて付近の海域は海難事故が絶えなかったといいます。先端には頂上に野島埼灯台が建ち、海上交通を見守ってきました。野島崎には白浜海洋美術館という美術館があります。展示の目玉は、万祝(まいわい)という、江戸時代に房総地域で誕生した、漁師の晴れ着です。大漁のシーズンに船主が船子に贈った、今で云うボーナスの現物支給のようなもので、漁や海にまつわる絵図が賑やかな装飾で施されています。